「目標」が君の原動力である。
【やる気は目標から生まれる】
「なりたい職業」「やりたい仕事」、それを実現するための「行きたい大学」を、とりあえずでも、複数でもかまわないので、君はすぐさま挙げることができるだろうか?
すぐに挙げることができたなら、君は、いま大学受験につながる学習をすることが楽しみになっているはずだ。(少なくとも苦ではないだろう?)
同様に、定期テストや模擬試験で「取りたい点数」「取りたい偏差値」「取りたい順位」「取りたい評価」などを挙げることができれば、君は能動的に定期テストや模擬試験の対策に取り組むことができる。
とまどうようであったら、君は、あまり効果的な学習ができていない。なぜなら、「強い必要」がないとき、人の「学ぶ力」は、じゅうぶんに発揮されないからだ。
「なりたい職業」「やりたい仕事」「行きたい大学」は、一言でいえば、「目標」である。「目標」は、自然に「やる気」を生む。本気で「行きたい大学」や本気で「取りたい点数」があると、君は、無意識のうちに、学習にあてられる時間をすべて学習に当てるようになる。なぜなら、人は「やりたいこと」をどうしてもやりたい生き物だからだ。
Wanting to > Having to
これは、学習効果を表している。
A I want to study hard.
B I have to study hard.
AとBが、同じ時間、学習したとして、どちらがより多く学んだであろうか?
Aは、自分から進んでやりたいのだから、どんどん学習を吸収していく。
Bは、できればやりたくないのが本音だから、学習が停滞しがちになる。(Bも切羽詰った状況であればAに近づくが、人の意志はそれほど強くない。やらねばならないことは、できればやりたくないのだから、だんだん学習速度は落ちていく)
効果的な学習のコツは、いつも「目標」を意識して、「行きたい」「学びたい」という状態で、学習に取り組むことだ。また、付け加えれば、緊張状態ではなく、いつもリラックスした状態で取り組むことだ。
このような状態で学習するとき、君の脳のなかの海馬体が快活に働く。効果的な学習は、海馬体を活性化することによって可能になる。
もっと単純にしてしみよう。
A I want to eat.
B I have to eat.
AとBでは、どちらが勢いよく、たくさん食べるだろうか?
さらに、
I want to eat to become a weight lifter.
のように目標がはっきりすると、もっと食べたくなるだろう。
学習もまったく同じである。
【不安に支配されてはいけない】
君が悩める若者であるとき、君は効果的に学習することはできない。学習の途中で、つい悩みごとを思い出してしまうからだ。
君が不安や心配や恐れを持った状態で学習に取りかかったとすれば、君はそもそも学習に集中できないし、扁桃体Amygdalaによって海馬Hippocampusの働きもかなり鈍ってしまう。心理状態が不安定であるときは、つねに緊張状態に置かれているから、いよいよ学習が空回りすることになる。(つまり、学習効果がない)
ところで、海馬Hippocampusは、大脳辺縁系の一部で、記憶や学習に関わる脳の器官である。情報を蓄えたり、思い出したりする役割を持つ。扁桃体Amygdalaは、アーモンド形の神経細胞の集まりで、側頭葉内側の奥にあり、人のThreat system(Fight or Flight)のトリガーであるといわれる。危険を感じて、わたしたちに警告を発し、安全を守らせるのが、その働きの一つだ。いちど警報を発すると、次回から、自動的に反応するようになる。少し似た状況に接するだけ(あるいは思い浮かべるだけ)でも、Threat systemが発動してしまう。
じつは、これが心的外傷後ストレス障害PTSDの仕組みであると考えられている。扁桃体は、現実の危険と想像の危険を区別することが得意でない。いちど、恐怖を体験すると、嫌なことを思い出すたびにThreat systemが稼働し、恐怖の記憶が増幅されてしまう。危険は過ぎ去っているにも関わらず、恐怖に支配されてしまうわけだ。
学校に行きたくない子どもも、会社に行きたくない大人も、この状態に陥っている。
Threat systemが稼働している間、海馬はうまく働かない。思考力も落ちていく…。 学校に行きたくない子どもも、会社に行きたくない大人も、扁桃体が引き金を引いた恐怖(嫌なこと)が感情的な理由なのだ。
さて、「大学受験など、どうってことない。戦うぞ」と思っている君は安心であるが、大学受験に対して不安になっている君は、今後、受験から逃げ出す危険性を持っている。
なぜなら、その不安は、扁桃体によって増幅され、いちど戦わずに逃げてしまうと、君は大学受験からどんどん遠ざかっていくことになるかもしれないからだ。
人は、嫌だと思いながら、学習することはできない。
大学受験に不安を持っている君は、じっくりと自分の目標を考えてみてほしい。
不安や恐怖に打ち勝つ方法は、ともかく「じっくりと考えること」。とりあえずであっても、目標が決まれば、「いま、やるべきこと」が見えてくる。そして、悩むことなく、取り組めばいい。
本当に達成したい目標を持てば、大学受験に対して、Flightせずに、Fightすることができる。
「目標」が君の原動力である。
本コラム担当:Tsutsui Yasuaki